タバコ・酒・女・薬物、そして精神病院へ・・・ 著:太宰治「人間失格」紹介&感想

2024年11月18日人生・社会

映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」を観て気になったので読んでみました。

インターネットの電子図書館と呼ばれる「青空文庫」で無料で読むことが出来ます。
「ソラリ」というアプリをダウンロードすれば青空文庫にある書籍をタブレットで読むこともできます。

難しい漢字や単語が多いので「漢字読み方検索」というアプリも合わせてダウンロードしておけば、手書きで漢字の読み方や単語の意味を検索できるので便利ですよ😄

【参考】

あらすじ

他人の考える幸福を自分にとっては幸福と考えることが出来ず、それゆえに他人を全く理解できず恐怖する主人公。

それでも人付き合いを避けては通れぬため「お道化」て他人を笑わせることで何とか世渡りを続けていた。

しかし学業に身が入らず学校を退学。
ここから主人公はタバコ・酒・女・薬物中毒、果ては精神病院に入れられるまでに、ズルズルと人間として堕ちていくことになる・・・

感想

まず主人公に対して思ったのは「コイツ自分のこと棚に上げて随分と他人を見下すやつだな」でした。

そして本作の文章中には()が多用されており、しかも()の中の文章が結構長くて読みづらい部分がチラホラありました。

最初は「太宰治も大したことないのか~?」と思いましたが、本作が他人を見下す癖に自身は酒だの女だのに現(うつつ)を抜かす主人公の独白であることを考慮すると、「文章書くの苦手な人ってこういう()を多用した読みづらい文章書きがちだよね」という太宰治の狙いがあり、わざとこういう文章にしたのかもしれません。
だとしたら流石昭和の名小説家って感じですね。

人間は依存する生き物?

あと本作の主人公の生き様を読んで感じたのは、「人間は依存する生き物なんだなぁ」ということです。

タバコ・酒・女・仕事・宗教・家庭・趣味etc・・・など人間は何かに依存しないと頑張れない・生きていけない生き物なんだなぁとしみじみ思いました。
依存しているものを言い換えるなら「生き甲斐」でしょうか。

かく言う私も趣味に依存しているので、趣味の一切を禁じられたら何をして日々を過ごしていったらいいのか分からないですね😅

気に入った文章・表現

天国はどこにある?

自分は神にさえ、おびえていました。神の愛は信ぜられず、神の罰だけを信じているのでした。

~中略~

地獄は信ぜられても、天国の存在は、どうしても信ぜられなかったのです。

太宰治「人間失格」P.286より抜粋

→天国はこの世の上に、地獄はこの世の下にあるというイメージを持たれがちだと思いますが、私は天国も地獄も現世に同居していると考えています。
格差社会の深刻化によってそれがより鮮明になってきているのではないでしょうか。
そして現世が天国となるのか地獄となるのかは、前世での行いが反映されているんじゃないかとも考えています。
来世でイケメンリア充or美人リア充に生まれるために、現世で徳を積んでおきましょう(笑)

ラブ・ジョイ詭弁

けれども、その時以来、自分は、(世間とは個人じゃないか)という、思想めいたものを持つようになったのです。

太宰治「人間失格」P.297より抜粋

→これは世間という都合のいい架空の存在を引き合いに出す、所謂「ラブ・ジョイ詭弁」というものを指摘した一文ですね。

大きな歓楽と大きな悲哀

即ち荒っぽい大きな歓楽を避けてさえいれば、自然また大きな悲哀もやって来ないのだ。
ゆくてを塞ぐ邪魔な石を蟾蜍(ひきがえる)は廻って通る。

太宰治「人間失格」P.303より抜粋

→これはハイリスク・ハイリターンを取るのか、ローリスク・ローリターンを取るのかという問題に似ているような気がしました。
私はマンガ「ジョジョの奇妙な冒険4部」に登場する吉良吉影のように平和な日々を望んでいるので、ローリスク・ローリターン派です。
(吉良は平和な日々を望みながら殺人というハイリスクを取っていましたが・・・😅)
大喜びが数回あるがその責任としてその後の日々は苦痛を伴うよりも、小さな喜びが何回もある平和な日々の方が個人的には性に合っています

憎めないやつ

そうしてあくる日、自分は、やはり昼から飲みました。
夕方、ふらふら外へ出て、ヨシちゃんの店の前に立ち、
「ヨシちゃん、ごめんね。飲んじゃった」

太宰治「人間失格」P.334より抜粋

→これはヨシちゃんに体に悪いからお酒はもう飲んじゃダメだと言われて、明日からお酒を飲まないと指切りげんまんした後すぐのシーンです。
もはや三日坊主とかいうレベルじゃなくて読んでいて「ふふっ」となりましたw
でもなんかすぐに白状してるところとか謝り方が憎めないんですよね~。

結婚は勢い?

結婚しよう、どんな大きな悲哀がそのために後からやって来てもよい、荒っぽいほどの大きな歓楽を、生涯に一度でいい

太宰治「人間失格」P.337より抜粋

→これは先述したハイリスク・ハイリターンの話ですね。
このぐらいの気概がないと結婚は難しいですよね~😩
こう思えるぐらいの相手に出会えていないと言えばそうなんでしょうけども、どんな素敵な人に出会えばこうなれるのか皆目見当もつきませんw

少数派の苦悩

しかし、その人たちの不幸は、所謂(いわゆる)世間に対して堂々と抗議が出来、また「世間」もその人たちの抗議を容易に理解し同情します。
しかし、自分の不幸は、すべて自分の罪悪からなので、誰にも抗議の仕様が無いし、また口ごもりながら一言でも抗議めいた事を言いかけると、ヒラメならずとも世間の人たち全部、よくもまあそんな口がきけたものだと呆れかえるに違いないし・・・(以下略)

太宰治「人間失格」P.400より抜粋

→本文中にもある通り本作の主人公の場合は自業自得なのですが、これは少数意見派の苦悩を上手に表現しているなぁと感心しました。
賛同を得ることが難しいからこそ抗議することすら憚(はばか)られる、最近になってようやく受け入れられるようになってきたLGBTQなどの価値観もこれに該当するのではないでしょうか。

幸福な人は他人の不幸に鈍感?

ああ、このひとも、きっと不幸な人なのだ、不幸な人は、ひとの不幸にも敏感なものだから

太宰治「人間失格」P.402より抜粋

→これには「ハッ」とさせられました。
逆に言えば「幸福な人は他人の不幸に鈍感」ということですからね。
確かに幸福な時ってその幸福を楽しむことに夢中で、不幸な人のことなんか頭の中を過(よ)ぎることすらないので、これは正しいと思います。
本当に優しい人は不幸な人、痛みを知っているからこそ同じ痛みを持つ者に本当の意味で寄り添うことが出来るのかもしれません。・・・なんかペイン長門みたいになってきましたね(笑)

いいか!?絶対に使うなよ!?

このお金は使っちゃいけないよ、と言っても、お前のことだものなあ、なんて言われると、何だか使わないと悪いような、期待にそむくような、へんな錯覚が起こって、必ずすぐにそのお金を使ってしまうのでした

太宰治「人間失格」P.410より抜粋

→これも笑いました🤣
いいか!?絶対に使うなよ!?そのお金は使っちゃだめだからな!?
ダチョウ俱楽部のギャグは日本の文学作品を参考にしていた・・・?