【書籍紹介】「じゅうぶん豊かで貧しい社会」著:ロバート・スキデルスキーほか

2023年9月7日人生・社会

今回ご紹介するのは、ロバート・スキデルスキーの「じゅうぶん豊かで貧しい社会」です。

無駄な浪費と長時間労働まみれの人生ではもったいないと気づかせてくれる書籍でした。

この書籍の内容から、私が興味を持った部分をご紹介させていただきます。

休暇は次に働くための充電期間になってしまっている(p.43)

今日の富裕国における余暇は仕事に代わるものではなく、いまだに仕事の添え物だからである。
骨の折れる労働の後では、人々はただ「ごろごろしたい」と思う。
休暇は、次に働くための充電期間として使われるのである。

「じゅうぶん豊かで貧しい社会」P.43より抜粋

思い当たる節のある人も多いのではないでしょうか?
私も株式投資やブログ・YouTubeを始める前は、休日はただの充電期間でした。

長時間労働のせいで休日を充電期間として使う人が増えたために、消費活動も少子化も改善しないのではないかと私は考えています。

常に準備のために費やされる人生は空しい(p.239)

余暇が基本的価値の1つである理由は、はっきりしている。
余暇のない人生、すなわちすべてのことが他の何かのために為される人生は空しいからだ。
そのような人生は常に準備のために費やされる人生であり、現実を生きることがない。

「じゅうぶん豊かで貧しい社会」P.239より抜粋

学歴偏重社会の昨今の日本にも、これが当て嵌まっているのではないでしょうか?
残業した帰りの電車で塾のカバンを背負った小学生くらいの子を見かけることがありますが、「こんな時間まで勉強漬けにされて可哀想・・・」と悲しくなります。

小学生になったら中学受験の勉強、中学生になったら高校受験の勉強、高校生になったら大学受験の勉強、大学生になったら就職活動のためのガクチカ(学生の時に力を入れた活動のこと)、社会人になったらひたすら労働の毎日・・・

悲しいことによほどの才能があるか親がお金持ちでない限りは、このように常に準備のために費やされる人生を歩むしかありません。

逆転の芽は社会人になってからです。
若いうちは自己投資のために浪費しろなんて言われますが、それこそ常に準備のために費やされる人生を助長する行為です。
自転車操業のような単純再生産を止め、支出を最適化し労働で得た資金で株式投資等の拡大再生産を行い、資本を育てることで初めて労働まみれの毎日から脱却する選択肢が生まれます。

私自身労働まみれの毎日から脱却するため、2019年からコツコツと準備を進めている真っ最中です。

人生への準備には、もううんざりした。今こそ生きてみたいんだ。

サマセット・モーム

資本家と経営者の富のために消費が促される(p.62)

「もっと」消費しないと二流のつまらない生活を送ることになるぞ、と広告は耳元で囁き続ける。

「じゅうぶん豊かで貧しい社会」P.62より抜粋

資本主義社会の性質上、経済循環すればするほど資本家と企業経営者に富が集中するので、上記のように満たされない思いを創出して労働者層の消費を促し、更に多くの富を得ようとするわけですね。
「超訳 資本論」でご紹介した単純再生産(自転車操業)を促しているとも言えます。

資本家や企業経営者からすれば労働者層に資本形成されて「そんな条件では働きません」なんて言われると困るので、消費を促すことで資本形成を遅らせるという側面もありますね。

私は少しでも早く労働者というラットレースから抜け出すため、単純再生産ではなく拡大再生産によって資本を形成するべきだと考えており、実際にコツコツと形成している途中です。

【参考】目次8.単純再生産と拡大再生産

無限の欲望が格差社会を深刻化させる(p.102)

経験からすれば、物質的欲望が自然に止まることはない。意識的に歯止めをかけない限り、とめどなく膨らむだろう。
~中略~
しかし、(資本主義は)富が伴うはずの大きな恩恵、すなわち足るを知る感覚はもたらさなかった。

「じゅうぶん豊かで貧しい社会」P.102より抜粋

「FIRE最強の早期リタイア術」でご紹介したヘドニック・トレッドミル現象や「超訳 資本論」でご紹介した限界効用とは矛盾するような気がしますね。
物質から得られる満足度が下がれば自然と興味が薄れるように思えます。

一方でお金に関しては1000万円貯めたら次は2000万円。2000万円貯めたら次は・・・といった具合に留まるところを知りません。
これにより十分お金を持っている資本家や経営者がノブレスオブリージュの精神を持たず、もっともっとと労働者をこき使い富を得ようとしているのです。
*ノブレスオブリージュ:恵まれている人が恵まれていない人を助けてあげるべきだという考え方のこと

「大いなる力には大いなる責任が伴う」のに、こんなことをしているから格差社会が深刻化してゆくのです😰

【参考】目次2.ヘドニック・トレッドミル現象

【参考】目次5.神の見えざる手、限界効用

無駄な消費を煽ることで長時間労働させる(p.289)

現代の生き方は貪欲を煽り、またその貪欲が生き方を決めるという具合になっている。
~中略~
消費は現代社会における偉大な気休めであり、むやみに長時間働くことに対する偽りの報酬である。
~中略~
一方で消費競争を煽って労働時間の短縮を妨げている。今日の資本主義に対する重大な不満の1つは、労働を過剰に生み出す一方で余暇を十分に創出せず、その結果として友情や趣味やボランティア活動を減らしてしまったことである。

「じゅうぶん豊かで貧しい社会」P.289より抜粋

労働者が長時間労働すればするほど経営者や資本家は得をするので、無駄な消費を煽り「消費しない人生は二流である」という風潮を流布します。

昭和のマイホームやマイカー、結婚して子供をつくって初めて一人前みたいな価値観がまさにそうですね。

結果、抜粋した部分でも触れられている通り昭和のオジサンの一部は友情や趣味に費やす時間を失い、仕事ばかりで家のことを手伝わないので家庭での居心地が悪く、「休むくらいなら仕事したい」とか「休みなんて貰っても何をしていいかわからない、やることがない」となってしまう。

充実していないプライベートから目を逸らすための口実に仕事を使っているとも言えますね。
こういう人が一定数いるので長時間労働の改善は難しいと思います

ブロニー・ウェア著「死ぬ瞬間の5つの後悔」では「働きすぎなければよかった」という後悔があると紹介されています。
私はこんな後悔はしたくないですね。

望んでいないサービスのために税金を払わされる(p.289)

国民は望んでいないサービスや、税金で賄(まかな)われるより自分で払いたいと考えているサービスに税金を払わされ、よい学校やよい病院やよい鉄道といった、ほんとうに欲しいサービスは提供されていない。

「じゅうぶん豊かで貧しい社会」P.289より抜粋

これは年金制度に当てはまると思いました。

別に長生きなんかしたくないし、年取ってからお金なんかいらないので毎月4万円も天引きするの止めて欲しいです・・・😭

自分で株式投資しますよ。わざわざ国に運用してもらう必要ありません。
こういうのは選択式にして欲しいですね~。まぁ無理でしょうけど。

【参考】目次1.日本の年金制度と負担増(P.77)

紀元前のミニマリスト?(p.112)

紀元前四世紀古代ギリシャ犬儒学派の哲学者:ディオゲネスは極端な禁欲主義者で、樽の中に住んでいたそうです。
あるとき子供が素手で水を飲んでいるのを見て、たった1つの所持品であったお椀も必要ないと判断したらしく、捨ててしまったとのこと。

アレクサンドロス大王に「何かして欲しいことはないか?」と日向ぼっこ中に尋ねられた際には「日陰になるからどいて欲しい」と答えたという話もあります。

ディオゲネスはこれで幸福だったのでしょうか・・・?😅

また、同時代の哲学者:エピクロスは次のように述べています。
快楽は欲望を満足させることではなく、欲望を最小限に減らすことにある

「もっともっと」という欲望には際限がないので、欲望を最小限に減らすことが快楽に繋がるということですね。

「舌を肥やすな。飯がまずくなるぞ。」
「足るを知る。」
「空腹は最高のスパイス。」
「不自由を 常と思えば 不足なし。」
といった言葉に通じるところがあると思いました。

他人との比較は不幸になるだけ(p.153)

ナチス政権が崩壊し東西ドイツ統一後、旧東ドイツの労働者は実質賃金が上昇したにもかかわらず幸福度が低下したそうです。
原因は自分たちよりも遥かに裕福な旧西ドイツの新しい仲間と自分たちを比較するようになったためです。

似たような事例としては、国連が発表している「世界幸福度ランキング」で上位にいたブータンという国は,インターネットが普及した頃から順位を落としたそうです.
【参考】ブータン「世界一幸せな国」の幸福度ランキング急落 背景に何が?

これらの事例からも分かるように他人と比較しても良いことなんか1つもありません。
比較するべき対象は過去の自分だと思います。

例えばあの人はフォロワーが私より多い・・・とか、あの人は私よりブログの訪問者が多い・・・とか、あの人はYouTubeのチャンネル登録者数が私より多い・・・とか比較することに意味なんてありません。

そうじゃなくてtwitterやブログや動画投稿をするようになって、する前の自分にはなかったものを得られているはずです。
自分の成長とか行動そのものを楽しむことが幸福に繋がると私は考えています。

インターネットやSNSの普及によって自分よりも成功していたり幸福そうに見える人たちが簡単に目につくようになっていますが、参考や目標にする程度でいいと思います。
比較して落ち込んだりせずに自分のペースで頑張っていきましょう!

まとめ

・休暇が次に働くための充電期間になってしまっている
・常に準備のために費やされる人生は空しい
・経営者や資本家の富のために無駄な消費が煽られ長時間労働を生む
・国民が本当に望んでいるサービスに税金が使われているとは限らない
・快楽は欲望を満足させることではなく、欲望を最小限に減らすことにある
・他人との比較は不幸になるだけ

以上、ロバート・スキデルスキーの「じゅうぶん豊かで貧しい社会」の紹介でした。
この書籍は、無駄な浪費と長時間労働まみれの人生ではもったいないと気づかせてくれる書籍だと思います。
気になった方はぜひ読んでみてください。

以上、参考になれば幸いです。