電磁気学 理論 1-7.電子理論
目次
半導体
導体と半導体と絶縁体
物質は電流が流れやすい順に、導体・半導体・絶縁体に分類できます。
分類 | 例 | 電気の流れやすさ | 抵抗率 |
導体 | 金Au・銀Ag・銅Cu・鉄Fe | 大 | 低 |
半導体 | ゲルマニウムGe・シリコンSi | 中 | 中 |
絶縁体 | 空気・ガラス・ゴム・雲母(マイカ)・ポリエチレン | 小 | 高 |
・導体は自由電子を持っており、この自由電子が移動することによって電流が流れます
・半導体は電子が原子核に束縛されていますが、温度が上がると一部の電子が束縛を逃れて移動できるようになるので、電流が流れやすくなります
・絶縁体は電子が原子核に強く束縛されているため自由に移動することが出来ず、電流は流れません
原子の構造
・原子:原子核+電子で構成されている、すべての物質を作っている粒子のこと
・原子核:電子と同じ数の陽子+中性子
・最外殻:一番外側の電子の軌道のこと
・電子の軌道:内側から順に以下の表のとおり名前が付けられています
電子の軌道 | 最大電子数 |
K殻 | 2 |
L殻 | 8 |
M殻 | 18 |
N殻 | 32 |
・共有結合:隣り合う原子の価電子を共有することで結合している状態のこと
・価電子:最外殻の軌道にあり、結合に関係する電子のこと
・正孔(ホール):原子核に拘束されていた価電子が、光・熱・電界などのエネルギーによって束縛を逃れて自由電子となり抜けた孔のこと
・キャリア:電荷を運ぶ役割をする自由電子や正孔のこと
半導体の種類
・真性半導体:不純物を含まない純度が高い半導体のこと
・不純物半導体:微量に不純物を混ぜてつくった半導体のこと
・n形半導体:ヒ素As、リンP、アンチモンSbなどの価電子が5個の原子を不純物(ドナー)として微量に混入(ドープ)させた半導体のこと。4個の電子がシリコンSi原子と結合しマイナスの電荷を持つ電子が1つ余る。
・p形半導体:インジウムIn、ホウ素B、ガリウムGaなどの価電子が3個の原子を不純物(アクセプタ)として微量に混入(ドープ)させた半導体のこと。3個の電子がシリコンSi原子と結合しマイナスの電荷を持つ電子が1つ足りなくないので正孔ができる。
キャリア
・多数キャリア:数が多い方のキャリアのこと
・少数キャリア:数が少ない方のキャリアのこと
・ドリフト電流:キャリアが電界による力を受けて流れる電流のこと
・拡散電流:キャリアの拡散によって流れる電流のこと
・キャリアの再結合:正孔に自由電子が入って再び結合し、電子と正孔が消滅する現象のこと
ダイオード
ダイオードの構造
・ダイオード:電流を一定方向にしか流さない性質を持つ電子素子のこと。アノードとカソードで構成されている。
・アノード:ダイオードのp形半導体側のこと
・カソード:ダイオードのn形半導体側のこと
・順電流:アノードからカソードの向きに流れる電流のこと
・逆電流:順電流と逆向きの電流のこと
pn接合
・空乏層:ダイオードのアノードとカソードの接合面近くで正孔と自由電子が打ち消し合い、キャリアが存在しない空間のこと
ダイオードの働きと整流作用
・整流作用:順方向には電流を流すが逆方向にはほとんど電流を流さない作用のこと
・空乏層を打ち消す順電圧をかけると電流が流れる
・逆電圧をかけても空乏層が広がるだけで、電流は流れない
・降伏電圧:降伏現象が起きる電圧のこと
・降伏現象(ツェナー効果・なだれ降伏):逆電圧を大きくしていき降伏電圧になると、急に大きな電流が流れる現象のこと
ダイオードの特性
・電圧電流特性:どのような電圧を加えたときにどのような電流が対応して流れるかを示す非線形の半導体の性質のこと
ダイオードの種類
ダイオードには以下のような種類があります。
種類 | 特徴 | 用途 |
定電圧ダイオード (ツェナーダイオード) | 降伏電圧付近では電圧がほぼ一定 | 一定の電圧を得る |
可変容量ダイオード | 逆電圧をかけて空乏層の幅を変化させることで 空乏層の接合容量を変化させる | 同調回路 (特定の周波数と共振する回路) |
発光ダイオード (LED) | 順電流を流すと接合面付近で 正孔と自由電子が再結合し発光する | 照明 |
レーザーダイオード | 3層構造(p形相・活性層・n形相) 順電流を流すと活性層で 正孔と自由電子が再結合し光が発生 その光が作用して他の電子も再結合し 同じ波長と同じ位相の光が次々に発生する これを誘導放出という | レーザー光を発する |
フォトダイオード | 光を当てると光量に応じて電流が流れる | 光起電力効果 光の検出 |
トランジスタとFET
バイポーラトランジスタ
・トランジスタ:半導体の性質を利用して電気の流れをコントロールする素子のこと。信号を増幅したりスイッチングに利用される。
・npn形トランジスタ:n形半導体でp形半導体をはさんだトランジスタ
・pnp形トランジスタ:p形半導体でn形半導体をはさんだトランジスタ
・トランジスタの構成
名称 | 備考 |
p形半導体 | – |
n形半導体 | – |
ベース | 真ん中に挟まっている半導体から出ている端子 |
コレクタ | 両側から挟んでいる半導体から出ている端子の片側 |
エミッタ | 両側から挟んでいる半導体から出ている端子の片側 |
金属端子 | ベース・エミッタ・コレクタの半導体と触れている部分 |
基板 | 土台の役割 |
絶縁膜 | 基板等の表面を覆う酸化ケイ素SiO2の膜 |
・トランジスタの動作原理
パターン | 動作 |
1つの電源のみを接続した場合 | コレクタ-ベース間が逆電圧になって 空乏層が広がり電流は流れない |
2つの電源を接続した場合 | 正孔の方が少ないので 余った大部分の電子が通り抜けていく |
・接地方法
接地方法 | 備考 |
エミッタ共通接続 (エミッタ接地) | トランジスタに接続した2つの電源が 両方ともエミッタに繋がっている接続のこと |
コレクタ共通接続 (コレクタ接地) | トランジスタに接続した2つの電源が 両方ともコレクタに繋がっている接続のこと |
ベース共通接続 (ベース接地) | トランジスタに接続した2つの電源が 両方ともベースに繋がっている接続のこと |
・ベース電流をIB、コレクタ電流をIC、エミッタ電流をIEとすると
IE=IB+IC
・直流電流増幅率hFE=IC/IB
電界効果トランジスタ(FET)
・電界効果トランジスタの種類
pチャネル形 | nチャネル形 | |
接合形 | ・p形半導体+n形半導体のみの構成 ・ソースとドレーン:p形半導体 | ・p形半導体+n形半導体のみの構成 ・ソースとドレーン:n形半導体 |
絶縁ゲート形 (MOS形) | ・2つのp形半導体+n形半導体の上に 絶縁膜・金属端子・ゲート端子の順に 乗っている構成 ・ソースとドレーン:p形半導体 | ・2つのn形半導体+p形半導体の上に 絶縁膜・金属端子・ゲート端子の順に 乗っている構成 ・ソースとドレーン:n形半導体 |
・チャネル:キャリアの通路のこと
・MOS:Metal(金属端子)、Oxiside(絶縁膜)、Semiconductor(半導体)
・バイポーラトランジスタと電界効果トランジスタの比較
バイポーラトランジスタ | 電界効果トランジスタ (ユニポーラトランジスタ) | |
端子 | ベース コレクタ エミッタ | ゲート ソース ドレーン |
制御方法 | 電流制御形 (ベース電流でコレクタ電流を制御) | 電圧制御形 (ゲート電圧でドレーン電流を制御) |
備考 | 2種類のキャリアで働く | 1種類のキャリアで働く |
・絶縁ゲート形FETの種類
種類 | 特徴 |
エンハンスメント形 | ゲート電圧によって絶縁体の両側を コンデンサのようにして電子を集め p形半導体のゲート付近を疑似的にn形半導体として チャネルを広げる |
デプレッション形 | あらかじめチャネルを作っておき ゲート電圧によってチャネルを狭くする |
電子の運動
電子放出の種類
・電子放出:熱や電界などの影響を受けて、物体の表面から物体の外へ電子が放出される現象のこと
種類 | 現象 |
熱電子放出 | タンタルTaなどの金属を熱すると 熱エネルギーによって電子が放出される |
二次電子放出 | 金属・金属酸化物・金属ハロゲン化物などに 電子を衝突させるとそのエネルギーによって 表面から新たな電子が放出される |
電界放出 | タングステンWなどの金属表面に 強い電界をかけると常温でも電子が放出される |
光電子放出 | 物質に光をあてると光エネルギーによって 物質内の電子が表面から外に放出される |
電界中の電子の運動
・電界中のエネルギー保存の法則
電子の電荷をe[C]、質量をm[kg]、電圧をV[V]、加速した電子の速度をv[m/s]とすると
位置エネルギーU=eV、運動エネルギーK=1/2*mv2なので
eV=1/2*mv2
磁界中の電子の運動
・ローレンツ力F:電荷q[C]の粒子が速度v[m/s]で磁束密度B[T]の磁界中を運動するときに粒子に働く力のこと。電子の進む方向が電流の流れる方向と逆向きであることを利用すれば、フレミングの左手の法則で力の向きが分かる。
F=qvB
・サイクロトロン運動:一様な磁界中に電子を垂直に入射させたときの等速円運動のこと。このとき向心力であるローレンツ力と遠心力がつり合っているので
qvB=mv2/r
整流回路
整流回路とは
・整流回路:正と負に交互に入れ替わる交流電圧から正の電圧のみを取り出す回路のこと
・半波整流回路:交流電圧の正の部分のみから正の電圧を取り出す回路のこと
・全波整流回路:交流電圧の正と負の両方から正の電圧を取り出す回路のこと。横軸で負の波形を正側に折り返すイメージ。
トランジスタの増幅度と利得
・増幅度:入力信号に対する出力信号の大きさの比のこと
・利得:増幅度を対数で表したもの
単位:デシベル[dB]
電力利得Gpが10倍になることを1[B]とするためにGp=10log10(出力/入力) で定義されています。
電圧利得Gvと電流利得GiはP=V2/R=RI2であるためGv=Gi=20log10(出力/入力) で定義されています。
演算増幅器(OPアンプ)
・演算増幅器(OPアンプ):反転入力と非反転入力の2つの入力から1つの出力を行う増幅器のこと
・理想的な演算増幅器
①周波数特性(f特性)が良い→どんな周波数の電圧でも増幅できる
②入力電圧が電圧降下しない→入力インピーダンス∞
③出力電圧が電圧降下しない→出力インピーダンス0
④微小な入力信号を∞まで増幅できる
・反転(逆相)増幅回路:入力電圧と出力電圧の符号が逆になる増幅回路のこと
+端子がアース電位0[V]
・非反転(正相)増幅回路:入力電圧と出力電圧の符号が同じになる増幅回路のこと